不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

Aさん亡くなる。その⑥

 Aさんは、いろいろと風評のある人だった
 そのいずれもが良い話ではない。
 医者として薮である、ジャングルであるという点は一つ目
である。
 2点目は、Aさんが当地へ引っ越してきてから、つまり医
院を開業してから数年たった頃に明らかになった。
 班の来年度の班長の引継ぎのため、その年の班長
TMさんが次年度のA医院に行った。
 TMさんは、Aさんに班長の業務の説明をするつもりだっ
た。
 だが、Aさんは話を聞かずにこう言った。
 「うちは、町内の仕事は一切やりません」
 役目を拒否するというのだ。
 これは、完全に予想外の宣言である。
 町内では、一軒ごとに年度替わりの持ち回りで順に班長
を担当することになっている。
 今までこれをやらなかった家は一軒もない。
 やって当然なことなのだ。
 Aさんにやらない理由を尋ねた。
 「うちは医院である。医院として社会に貢献しているので、
町内の役はやらない」
 なんという言い訳だ。
 これを聞いて皆が唖然とした。
 説明し説得しても頑として聞かない。
 「うちは医者である」という声明を繰り返すだけだった。
 「医者だからやる必要ない」ということらしい。
 そんな理由付けで断るのか?
 本気なのか?
 「こんな人見たことない」
 前例のない人の出現に皆は戸惑うばかりだった。
 
 ~続く~