早めに行ったいつものスーパーからの帰り道、氏神様
の横の道に入る。
何か聞こえてくる。
これは、篳篥(ひちりき)の音だ。
何か行事をやっているのか?
でも、この音は録音だろうな。
CDかテープだろう。
まぁ、それでも良いから参拝していくとするか。
行事を少し見学できそうだ。
私は氏神様の正面に周り、自転車を止めた。
鳥居をくぐって参道を前進する。
音楽の音が大きく聞こえてくる。
旋律とリズムが微妙に揺れている。
おぉ?ひょっとすると?
私は拝殿の前に立つ。
生演奏だ。
これは生だったのか!
拝殿の前には靴や下駄、雪駄が並んでいる。
見上げると拝殿にはたくさんの人が座っているのが
見える。
向かって右側に白い衣の神職風の人たち、左には
スーツ姿の男性で埋まっている。
時刻は10時5分、おそらく儀式開始から数分経過
と言ったところだろう。
境内には参拝客が、他にも4名いた。
そのうち3名は、よそからの観光客のようだ。
私は雅楽をナマで聞くのはこれが初めてである。
CDを持っているし、ラジオ等で流れれば聞いてい
る。
う~ん、生は良いなぁ。
音色やリズムに粗があるが、それも味になってくる。
雅楽が終わった。
次に名前が呼ばれた参加者が立ち上がり拝礼を
する。
市会議員や地元選出の代議士秘書も呼ばれて拝
礼をする。
先に呼ばれるほど格上扱いのようだ。
これは何の行事だろう?
儀式の殆どは拝礼で構成されていた。
拝礼が終わると、再び雅楽が始まった。
これが流れるということは、儀式もそろそろ終わり
かな。
私は社務所に行って係の人に尋ねた。
「新嘗祭です。農作物の収穫を感謝してのお祭り
です」
そうか、これが新嘗祭か。
行事が終わったようだ。
この間、約40分、私と観光客はずっと立って見て
いたのだった。
参加者が拝殿から降りてくる。
私も退却しよう。
私は鳥居の斜め前方に置いた自転車に乗り、ゆ
っくりと走り始めた。