不二家憩希のブログ

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班での通夜参列。その⑩

 大人数の会社関係の参列者も一斉に退場していった。
 会社の命令により集団での参列で、特に故人との思い
入れがあるわけではない。
 同僚の亡くなった父上というだけである。
 数台のバスを使っての来場のようだった。
 あの会社には、こうした際に使うように社用のバスがあ
るのか。
 それとも、チャーターしたのか。
 いずれにせよ、かなりの経費である。
 冠婚葬祭を通じて社の結束を図るという意図があるの
だろうか。
 一般の参列者も皆退場し参列御礼の品も配り終えた。
 班の人たちも、御礼の品を受け取った。
 残るのは親族と私たち班の人たちだけとなった。
 班の人たちの主要な業務は、終わりに近づいている。
 残るは、この日集まった香典を親族に引き渡すことで
ある。
 Nさんは、箱ごとTSさんの奥さんに手渡した。
 これで一安心である。
 さて、班の人もそろそろ退場か、という頃合いとなった。
 そこにTSさんの奥さんが来てこう言った。
 「ちょっと顔を見ていって!」と皆を促した。
 棺の中の故人の顔を見てくれ、ということである。
 う~ん、そうは言われても弔問の時に見ているからなぁ。
 私は最初から見る気は無かった。
 遺体は遺体であり、魂は抜けすでに物体である。
 腐敗が進みつつある物体に意味はない。
 そんなことは口には出さないが、そう思っている。
 他の方はどうかな?
 1人も見に行こうとはとはしない。
 奥さんは粘るが、誰も反応しない。
 結局、班の人たちは、そのまま退場することになった。
 
 ~続く~