大人数の会社関係の参列者も一斉に退場していった。
会社の命令により集団での参列で、特に故人との思い
入れがあるわけではない。
同僚の亡くなった父上というだけである。
数台のバスを使っての来場のようだった。
あの会社には、こうした際に使うように社用のバスがあ
るのか。
それとも、チャーターしたのか。
いずれにせよ、かなりの経費である。
冠婚葬祭を通じて社の結束を図るという意図があるの
だろうか。
一般の参列者も皆退場し参列御礼の品も配り終えた。
班の人たちも、御礼の品を受け取った。
残るのは親族と私たち班の人たちだけとなった。
班の人たちの主要な業務は、終わりに近づいている。
残るは、この日集まった香典を親族に引き渡すことで
ある。
Nさんは、箱ごとTSさんの奥さんに手渡した。
これで一安心である。
さて、班の人もそろそろ退場か、という頃合いとなった。
そこにTSさんの奥さんが来てこう言った。
「ちょっと顔を見ていって!」と皆を促した。
棺の中の故人の顔を見てくれ、ということである。
う~ん、そうは言われても弔問の時に見ているからなぁ。
私は最初から見る気は無かった。
遺体は遺体であり、魂は抜けすでに物体である。
腐敗が進みつつある物体に意味はない。
そんなことは口には出さないが、そう思っている。
他の方はどうかな?
1人も見に行こうとはとはしない。
奥さんは粘るが、誰も反応しない。
結局、班の人たちは、そのまま退場することになった。
~続く~