用事を終えて私は自転車に乗った。
今いる通りから西側に遠回りすると、当地の桜の
名所に行き当たる。
快晴である。
今日もまた風は吹いていない。
私は自転車を走らせる。
当地には桜の名所とされる場所が2~3カ所ある。
今日向かうのは、その中でも最も規模が大きい。
桜の木が多いのだ。
川の堤防の両脇に桜が数キロにわたって植えら
れている。
一本一本の桜の木に特にいわれがあるわけでは
ない。
数が多いというだけである。
だが、延々と桜の木が続く光景は、開花時には
特別なものがある。
ショッピングモールの横の道を抜けると、桜並木
が見えてきた。
咲いている。
七分咲きといったところか。
私は堤防の上の遊歩道に入る。
徒歩並にゆっくり走る。
頭の上を桜が覆う。
歩きながら花を見ている人たちとすれ違う。
ベンチに座っている人、シートを敷いて寛ぐ人た
ちもいる。
若い夫婦連れが小さな三脚を立てて、カメラをセ
ットしている。
桜の枝を構図にうまく入れようと調節をする。
三脚と同じくらいの背丈の男の子を真ん中にして、
カメラに向かってポーズをとる。
笑顔が切り取られカメラに収まり、笑い声が青空
へ広がっていく。
私は桜並木の遊歩道から降りた。
そして、自転車の速度を上げて走り始めた。