不二家憩希のブログ

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ピーター・フォーク 刑事コロンボへの日々 その⑪

 ピーター・フォークは、1月にもう一本のテレビ
ドラマに出演している。
 1月29日放送の"87th Precinct 87分署”
である。
 これは、エド・マクベイン原作の”87分署”シ
リーズを、原作としたテレビドラマである。
 マクベインは米国のミステリー作家で、警察
小説のパイオニアの一人である。
 1956年発表のシリーズ第1作”警官嫌い”以
来、87分署シリーズは、警察小説の代表作品
群として知られている。
 警察小説とは、警察官・警察関係者が主人公
のミステリー小説で、警察官・刑事による事件の
捜査と、それにまつわる警察内部の人間模様も
同時に描かれるものである。
 ミステリー小説(推理小説)は、その発祥時に
は素人探偵が主人公であることが多かった。
 これは、その当時は探偵という職業そのものが
現実には稀な存在であったことに因るものだと思
われる。
 次いでプロの探偵、いわゆる私立探偵が主役の
作品が主流となっていった。
 この時期はミステリー小説の黄金時代であり、
ミステリー小説=私立探偵の小説、というスタイル
が定着した。
 これらのミステリー小説では、警察官は脇役であ
り、時に警察権力を使い民間人である主人公の邪
魔をする嫌な存在として描かれることもあった。
 ホームズ、ポアロ、マーロウ、どの作品でも警察
は小馬鹿にされている。
 ヒーローはあくまで私立探偵であり、警察は権力
を使えるだけの役人と見なされていたのだ。
 こうした空気の中、1945年米国の作家、ローレン・
トリートが”被害者のV”という作品を発表した。
 この”被害者のV”は、史上初の警察小説である。
 トリートは、この一作により”警察小説の父”と呼ば
れている。
 このトリートの作品は、その後もシリーズ化された
のだが、セールス的にはあまり人気が出なかった
ようだ。
 その後、マクベインの”87分署”がシリーズ第一
作が1956年に発表されると”87分署”は大人気を
獲得していった。
 警察小説を一般に浸透させたのは、マクベインの
功績といえる。
 そのため、マクベインを”警察小説の元祖”と称す
ることもある。
 つまり、この1962年当時、警察官を主人公とした
ドラマは、時代の先端をいく新しいドラマだったので
ある。
  テレビドラマ”87分署”シリーズには、原作者の
エド・マクベイン自らが本名のエヴァン・ハンターで
脚本家として参加している。
 原作者なら、堂々とそのペンネームでクレジットす
れば良さそうなものなのだが、別名を名乗るとは、
マクベインという人はなかなか面白い人である。
 フォークが出演したのは”The Pigeon 鳩”という
回だった。
 フォークはゲスト主役で、誇大妄想にかかった男の
役だった。
 ”87分署”のオープニングとエンドタイトルである。
 ”いかにも”という感じがして、なかなか良い。
  この”87分署”シリーズは、日本でも1962年にフジ
テレビ系列で放送されている。
 
 ~続く~