網戸張り替えの飛び込みセールスの男性
（おっちゃん）が来てから数日後、今度は台風
１５号がやって来た。
台風における強風のレベルとしては「非常に
強い」ではあったが、「猛烈な」までではなかっ
た。
道の隅に置いてある電子レンジは、どうしよ
うか？
飛ばされるか？
否、２８㎏もあるし、飛んで行くような風の抵抗
を受けやすい形状でも無い。
仮にこの電子レンジが飛ばされる様な風が吹
くとすれば、もっと他の物も飛んで行くだろう。
まず大丈夫だろう、と思ってそのままにしてお
いた。
我が家では、台風上陸の一日前から、雨戸は
閉めっぱなしだった。
そのため、通りに誰が通るが室内からはわか
らなかった。
台風が通過した翌日の朝、私は早速庭に出て
みた。
何か飛ばされているかもしれない、飛んできた
かもしれないからだ。
植木鉢が一個倒れている。
どこかから５ℓ入りの除草剤空き容器が飛んで
きていた。
今回はこれくらいで済んだのか。
大きな被害が出なくて良かった。
私はそう思って道に目をやった。
あれ？
無い。
そこに置いてあった筈の電子レンジが消えて
いる。
まさか、風で飛ばされたのか。
それはありえない。
殆どの物が影響を受けない程度の風だったの
だ。
おそらく、誰かが持ち去ったのだろう。
この２日間は雨戸が閉まっていたので、見咎
められる心配もなかった。
へぇ～、持っていく人がいるのか。
電子レンジは、樹脂部分が多くなった最近の
電化製品のなかでは例外的に金属部分が多い。
金属は、いくらかはお金になるらしい。
それで欲しい人がいるのだろう。
何にしろ、これはちょっと嬉しいことだった。
処分する手間が省けた。
それにしても黙って持って行かなくとも、一言言
ってくれれば良かったのに、と思う。
気まずかったのだろうか。
ばつが悪いと感じていたとしたら、今回は違う。
こちらは助かったと思っている。
我が家の電子レンジは、こうして風と共に去っ
たのだった。
