不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

線の切れ目が縁の切れ目。その⑧

 10年前、我が家ではテレビを買い換えた。
 買ったのはS電器店である。
 S電器店で電化製品を買うのはこれが初め
てだった。
 設置や調整もしてもらった。
 それまで見ていたテレビは、S電器店に引
き取ってもらった。
 私はその日の夜、家に帰ってきて初めて新
しいテレビを見た。
 そして、あることに気が付いた。
 二またコンセントが無い。
 我が家のテレビのコンセントには、それま
で二またコンセントを差してあったのだ。
 二またコンセントは小さなものだが、無く
なると結構困る。
 え~、何故無い!どうして無い?
 私はテレビの設置に立ち会っていた母と言
い争いになった。
 二またコンセントに足が生えて歩き出した
わけも無く、急に無くなるわけが無いのだ。
 私はひょっとしてS電器店の主人が持って
行ったのかも?とも疑ったが、まさかそれは
無いだろう、と思い直した。
 二またコンセントなど買えば、数百円のも
のである。
 しかも電器店なら卸価格で手に入る。
 お客の家から持ち出すようなことはしない
だろう。
 しかも、我が家はS電器店にとっては、新
規の顧客である。
 いくらなんでも、そんなことはしないだろ
う、と思ったのだ。
 だが、いくら考えても持って行ったのはS
電器店の主人でしかありえない。
 他には可能性が無かったのだ。
 そしていろいろ考えた末、私は、この件に
ついてはそれ以上推測をするのを止めること
にした。
 新規のお客の家で盗みを働く商売人がいる
とは思えなかったからだ、
 そうは決めたものの、私の中にはS電器店
に対しては消えがたい黒い疑念として残って
いたのだった。

 そして、今回もまた我が家からモノが無く
なっていたのだった。
 それは、電灯線からシーリングへと変換す
るシーリング変換プラグである。
 これは、工事を済ませばその部屋にはいら
なくなるものである。
 しかし我が家には他にもこの変換プラグが
将来必要になるであろう部屋がある。
 それで、S電器店の主人が工事を済ませた
後、それを保管しておこうと思っていた。
 しかもそのプラグは、取り付けたばかりで
新品同様だったのだ。
 普通は、そうした取り外した機器は、置い
ていくものだろう。
 それを黙って持って行く、とはどういうこ
となのだろうか。
 これは事実上の窃盗である。
 しかし、私はS電器の主人がプラグを持っ
て行くところを直接目撃したわけではない。
 そう確信しているというだけである。

 さて、どうしようか?
 私は意外にこういう時には冷静なのである。

 ~続く~