随分前のことだが、私は本当に困った状況にあった。
詳細は伏せるが、何をどうしたら良いのか自身を持って判断できなかった。
沢山の人が私の周囲に集まってきた。
彼らの中の殆どは私にこう声をかけてきた。
「大丈夫?」
私はその声には、無反応を通した。
大丈夫ではなかったからだ。
大丈夫ではないのに「いや、大丈夫です」と応えるのは不正直である。
応答しない私に重ねて「大丈夫?」と尋ねてくる人も何人もいた。
私は彼らに「大丈夫じゃないです」と返した。
すると彼らは、どういう反応をしたのか?
彼らは困ったような顔をして、無言のまま立ち去ったのだった。
何だ、あの対応は?
彼らは最初から私を助けようとするつもりで、声をかけたのか?
ただ単に自分の興味で、自分の確認のために「大丈夫?」と聞いてみただけではなかったのか?
そして、本当に私を助けてくれた人たちは、決して「大丈夫?」とは言わなかった人たちだった。
彼らは私に尋ねることなくダイレクトに助ける方策を提案し、実行してくれた。
彼らもかつて私と同じ状況を経験したに違いない。
人を助けるには言葉よりも、まず行動である。
祈る唇よりも、助ける手である。