私は自転車を停めて空を見上げる。
おぉ、見える。
青空に花火の白煙が残る。
もうかなり近くにまで来ているようだ。
あの辺りに花火を揚げるような場所があるのか?
そばに神社は無いはずだ。
もっとも花火は神社の境内で揚げているわけではなか
ろう。
最寄りの公園・広場等で揚げているのだろう。
いずれにせよ、私は既にお祭りの町内に入っているよ
うだ。
それにしては各お宅に、お祭りらしい感じがしない。
花が無いため、そう感じるようだ。
「花」とは、お祭りの際に町内のお祭りの担当者から各
戸へ配られる造花のことである。
当地が含まれる地方では、県境をまたいで普通に飾ら
れる。
その花を、玄関先に飾るのである。
造花と言っても特に手の混んだものではない。
1メートルほどの竹の棒の約半分にピンク色に染めら
れた楕円形の紙が等間隔で何枚も貼られている。
ピンク色なので桜、もしくはその類の今の季節の花を
意味しているのであろう。
それだけのものなのだが、見れば花に見える。
質素な花ではあるが、これは手作りである。
これを町内連合会の全戸に配るのである。
準備の段階から大変である。
だが、私はそれらの過程をよく知らない。
手作りで町内連合会のどこかで作られているというこ
としか知らない。
私は自分に要請される作業については、かろうじて知
っているがそれ以外は実に無知なのである。
~続く~