不二家憩希のブログ

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松之助とさんま。その⑤

 師弟の関係は終生に渡り続いていく。
 さんま氏は今でも松之助師から薫陶を受けている。(以下敬称略)
 さんまはテレビで次のように語ったことがある。
 「松之助師匠から『読んでおけ』って言われて内山興
正とかの本の感想文を書かされる」
 これは今から15年ほど前に明かされたエピソードで
ある。
 その時にすでにさんまは日本一の人気芸能人となっ
ていた。
 そのさんまに本の感想文を書かせる。
 本は読んだだけでは身につかないこともあるが、読書
感想文を書くとなれば深く読まざるを得ず、それにより理
解度が増す効果がある。
 こんな中高生に対するような、しかしながら基本的な身
につく指導を松之助は行っている。
 しかも課題の本が内山興正である。
 内山興正は戦後日本における禅の大家の一人で、沢木
興道門下の俊英である。
 禅の本は、読む当人が興味があれば人生の薬になる。
 だが、そうでなければさっぱりつまらないものとなるだろう。
 果たしてさんまにとってはどうなのだろうか?
 いずれにせよ、松之助は小説等を読ませるのではなく、
内山興正を選んだ。
 実に硬派である。
 お笑いの実演とはかけ離れた印象を持たれるかもしれない。
 しかし、こうした姿勢こそ松之助の真髄だと思われる。
 笑いに隠された真理探求と実践の気構えを知る人は少ない。
 否、隠すからこそお笑いに深みと滋味が出てくるのかもしれ
ない。