さんま氏は今でも松之助師から薫陶を受けている。(以下敬称略)
さんまはテレビで次のように語ったことがある。
「松之助師匠から『読んでおけ』って言われて内山興
正とかの本の感想文を書かされる」
これは今から15年ほど前に明かされたエピソードで
ある。
その時にすでにさんまは日本一の人気芸能人となっ
ていた。
そのさんまに本の感想文を書かせる。
本は読んだだけでは身につかないこともあるが、読書
感想文を書くとなれば深く読まざるを得ず、それにより理
解度が増す効果がある。
こんな中高生に対するような、しかしながら基本的な身
につく指導を松之助は行っている。
しかも課題の本が内山興正である。
内山興正は戦後日本における禅の大家の一人で、沢木
興道門下の俊英である。
禅の本は、読む当人が興味があれば人生の薬になる。
だが、そうでなければさっぱりつまらないものとなるだろう。
果たしてさんまにとってはどうなのだろうか?
いずれにせよ、松之助は小説等を読ませるのではなく、
内山興正を選んだ。
実に硬派である。
お笑いの実演とはかけ離れた印象を持たれるかもしれない。
しかし、こうした姿勢こそ松之助の真髄だと思われる。
笑いに隠された真理探求と実践の気構えを知る人は少ない。
否、隠すからこそお笑いに深みと滋味が出てくるのかもしれ
ない。