訃報が報じられた。
私はスター・ウォーズには、一ミリも興味が持てない
のだが、この訃報を聞いてあることを思い出した。
R2-D2とは小ぶりなドラム缶のような形をしたロボット
である。
人間の言葉は話せず、コンビを組んでいる金色の人
間型のロボットがその意向を翻訳して話した。
言葉を発しない代わりに、ロボットとしては異例の素
早い動きを見せた。
一つ一つの反応が早いのだ。
存在感があり、物語の人気キャラクターのひとつだっ
た。
スター・ウォーズの第一作がロードショー公開された
当時のことである。
R2-D2をみた私の周囲のある人が、こう言った。
「あれは中に人が入っている」
「絶対中に人が入っている」
そう断言したのだ。
当時は、中に人が入っているといった情報は提供さ
れていなかった。
どういう仕組みでR2-D2が動いているのかは、謎だった。
あれくらいは、リモートコントロールで動かせるだろう、
と考えていた人が多かったように思う。
世界の先端を行くハリウッドの技術である。
それくらい可能だろうと思われていた。
「中に人が入っている」と断言したその人によると、そ
の理由は次のようなものだった。
あれだけの早い動きは、中に人が入っていないと無
理だ、というものだった。
たしかに、R2-D2は複雑な動きはしないが、ひとつひ
とつのアクションは素早かった。
他の登場キャラクターとの絡みやリアクションは瞬時
に行われた。
後年、実はR2-D2の中には人が入っている、という情
報が公になった。
第一作公開からかなり時間が経ってからのことだと
記憶している。
大勢を占める意見に埋もれず、見抜いたその人の眼
力は大したものだなぁと思う。
訃報に接し、私はそんなことを思い出した。