午前10時過ぎ、遠くから「カーン」という甲高い音が聞
こえてきた。
5秒ほどしてまた「カーン」と鳴った。
葬儀を知らせる合図である。
これは当町内で、昔から行われている。
町内の係りの方が二人一組となり、音のする長い板
を持って町内を歩いて回る。
時折、その板を叩いて音を鳴らす。
少し金属的な高音である。
私はこの板の正しい名前を知らない。
角が丸くなった縦30㎝横70センチほどの長方形の板
である。
寺の魚板のような形状である。
次第に音が近づいてくる。
歩くコースは大体決まっている。
町内の各戸に聞こえるように歩く。
我が家はコースの端の方だ。
この音を聞くと(あぁ~人が亡くなったのだなぁ)と思う。
音が一段と大きくなった。
我が家のすぐ近くまで来ているようだ。
そして、その音は少しずつ小さくなっていく。
町内に貢献されたFさんとのお別れである。