医師は私の方を向くとシャツを上げるように言った。
体前面に聴診器を当て、向きを変えさせ背面にも
当てた。
医師は思っていた以上に若かった。
年齢はわからない。
おそらく40代だろう。
この医院はこの医師で何代目かになる。
だが、お坊ちゃん風にはなっていない。
「特に異常はないようですね」
医師は静かに言った。
あれ?
血圧を2度も計ったことには触れないのか?
私はそう思った。
だが、黙っていた。
まぁ、いいか。
悪ければ悪い、と言われるだろう。
あとで調べると血圧は日によってもかなり数値が
違うそうだ。
へぇ~そうなのか。
私は常にほぼ一定なのだと思っていた。
検診は終わった。
私は診察室を出た。
付き添っていた看護士が私に声をかけてきた。
「結果がこちらに届くまで一カ月くらいかかります
ので、またその時にこちらから電話します」
一カ月か。
その頃には忘れていそうだな。
私はスリッパから靴に履き替え医院のドアを押し
外へ出た。
私は自転車に乗り、次の目的地へ向かった。
弱めの風が気持ちよかった。