いつものスーパーに行った時のことである。
そのスーパーには入り口から少し入ったところに
催事コーナーがある。
1週間交代で店は変わる。
陶器を売る店が来たり、遠方の地域の名産物を
売る店が来たりする。
今回はCD・DVDの店である。
品揃えは、ターミナル駅の構内などでワゴンに載
せられているものとほぼ同じである。
私はジャズのCDを見ていた。
ひょっとして掘り出し物があるかもしれないからだ。
並べられている盤の殆どが著作権切れをしている
盤のコピー盤である。
う~ん、目ぼしいものは無いなぁ。
そう思っていると、初老の男性が声をかけてきた。
「ジャズを探している?」
この店の主人のようだ。
「ルイ・アームストロングとかありますよ」
その口ぶりは、ジャズ=ルイ・アームストロング、
と思い込んでいるかのようだった。
ははぁ、この主人はジャズについて、あまりよく知
らないなぁ。
こういう時は、マイルスやビル・エバンスを勧めるの
が手堅いところである。
日頃からルイ・アームストロングを熱心に聴いている
ジャズファンは、極めて少数だろう。
私は店主に軽く会釈して催事コーナーから離れた。
店頭のCDプレーヤーからは、演歌が盛大に流れて
いた。
これでは、ジャズは知らないのも無理はないな。
私は、演歌の熱唱を背にしてスーパーの売り場に向
かった。