私は自転車でゆっくり走っていた。
用事が終わり家への道を行く。
町内にある信号のある交差点を渡る。
そこの歩道を少し行くとあるお宅がある。
庭に数本の木が植えられている。
そのうちの一本の木の枝の所々がピンク色になっ
ている。
花の蕾である。
灰茶色の枝に点々とアクセントとなっている。
もうそんな季節なのだなぁ。
私は、この時期にこのお宅の花を見ると、春を感じる。
だが、私はこの木が何の木か知らない。
桜ではない。
梅でもない。
桃とも違う。
何の木なのだろう?
このお宅の方に尋ねれば、すぐにわかることである。
しかし、それがなかなかできない。
気恥ずかしいのである。
私はその名は知らねども、その蕾は春の到来は告げ
てくれている。