これは数年前のことである。
わが家の近所にINさん宅がある。
そこの息子が、どうやら暴走族に入ったらしい。
ほぼ毎夜、深夜になると爆音を立てて家を出ていく。
発送前に空蒸かしをする。
それがとんでもなく大音量なのだ。
最初に聞いた時には(何事だ!?)と思ったほどだ。
その盛大な空蒸かしは暴走族の一種のパーフォー
マンスのひとつなのか、それとも走るために必要なの
か、いずれにせよ、とてもうるさかった。
爆音が出るように特別に改造してあることは、間違
いなく絶叫のような音だった。
それが毎夜、繰り返された。
ご近所の皆さんは(やかましいな)と思っておられた
と思う。
このINさんの一家は、現役暴走族の息子の父親も
若い頃はツッパリ・ヤンキーだった。
たちの悪い不良というところまではいかないまでも、
ツッパッていたのだ。
父親は暴走族に入らなかったが、地域ではそれな
りに知られた存在だった。
そのため、(まぁ、あの家だから仕方ないな)と見な
されていた。
ちなみにその父親は社会人となってからは、普通
の人として暮らし始めた。
若い頃にありがちなことと言えなくもなかったのであ
る。
その父親の父親、暴走族からするとお祖父さんは、
ごくまともな人だった。
お祖母さんも普通の人だった。
そのためご近所からは、暴走族に入ったとしても
(若いうちだけだから大目にみよう)という空気だっ
た。
~続く~