禰宜さんの○さんはお供え物が揃っているのを
確認すると駐車場に向かった。
そしてすぐに戻ってきた。
履物を履き替えている。
草履から沓(くつ)に履き替えてたのだ。
これは正しくは浅沓(あさぐつ)と言うらしい。
普通の靴は革であるが、これは木靴である。
そのため字も違ってくる。
黒くピカピカに光っている。
漆塗りだろう。
これはレアな履物だ。
量産できない木靴である。
おそらくオーダーメイドだろう。
作り置きしても需要が限られているからだ。
足型を取って彫っていくのではないだろうか。
しかも漆塗りである。
幾ら位するのだろう?
人さまの持ち物を値踏みするとは品がよくない
行為である。
ちょっと気になる。
○さんに尋ねればきっと教えてくれるだろう。
○さんは、普段は気さくな近所のおじさんである。
細かいことにこだわらない人という印象がある。
その○さんが、儀式の直前まで履かなかった沓
である。
えぇ~、そんなにするの!というような価格なの
ではなかろうか。
あるいは価格はともかく受注生産の品なので代
替が簡単に手に入らないのかもしれない。
貴重品であることは間違いない。
○さんはカッポ、カッポと音を立てて歩いてくる。
見た目だけでなく音も違う。
普通は聞けない音である。
こんな音のする履物は他にはない。
非日常的空間を齎せる音である。
これで儀式の準備は整った。
~続く~
浅沓(あさぐつ)について紹介されているブログです。
岡田宮ブログ 神職道具~浅沓~