不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

テレビを出す。その⑥

 廃品回収の日が来た。
 チラシには朝9時までに玄関前に搬出しておくよ
うに、と記載がある。
 朝9時スタートで順次回収して廻るのであろう。
 道を見渡すとご近所で廃品を出している家はわ
が家だけのようだ。
 何時ごろに来るのだろうか。
 わが家の場合、有料となっているテレビを出して
いるので、その時には居合わせないといけないだ
ろう。
 8時半、わが家の前にトラックが止まった。
 大柄な男性が降りてきた。
 業者か?
 鳶職の人が着るような作業服姿である。
 男性はビデオデッキ、ラジカセ、電話機をトラック
の荷台に積み込んでいく。
 あれ、まだ8時半だけれど。
 それにしても大きい人だな。
 テレビには触ろうとしない。
 男性はわが家の玄関先に来た。 
 私はドアを開ける。
「テレビはですね、有料になっちゃうんですがいい
ですか?」
 そうですか、おいくらですか?
「テレビは1000円なんですよ」
 何か吹っ掛けてくるようだったら、即お断りするつ
もりだったのだが、そんなことにはないようだ。
 私は1000円を払った。
 少し話を聞いてみる。
 テレビや冷蔵庫は有料なのだそうだ。
 電話をすれば、いつでも回収に来るとも言った。
 話をすれば怪しい人かどうかは大体わかる。
 この人は、ほぼ信用できそうだ。
 しかし、領収書はくれなかった。
 1000円なので必要ないと思ったのか、それとも
最初から領収書という発想が無かったのか。
 領収書を切ってくれれば信用は増すのに惜しい
ことである。
 トラックはゆっくりと走り出した。
 廃品が搬出されているのを探しながら走るのだ
ろう。
 小雨が降り始めた。
 晩秋の雨は冷たそうだった。