不二家憩希のブログ

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ピーター・フォーク 刑事コロンボへの日々 その⑨

 1961年のピーター・フォークの映画出演は1本だ
けだった。
 ”Pocketful of Miracle ポケット一杯の幸福”で
ある。
 この作品は映画史上に残る名作として今日でも
極めて高い人気を保っている。
 ニューヨークを舞台としたファンタジーあふれるコ
メディで、人情喜劇とも評される名作である。
 ニューヨークの街頭で街ゆく人々にリンゴを売る
アップル・アニーという老婦人がいた。
 アニーは、差し迫った悩み事があった。
 離れて住む娘が、伯爵家の子息と婚約しニュー
ヨークに来るというのだ。
 アニーは、日頃の娘との手紙でのやりとりで、
「自分は社交界の貴婦人として幸せに暮らしている」
と嘘を書いていたのだ。
 もし、アニーの現状がばれてしまったら縁談は破
談になってしまうに違いない。
 そんなアニーの苦悩を売り出し中のニューヨーク・
ギャングのボス・デイブが聞きつけた。
 デイブは、普段からからアニーのお客でアニーの
リンゴを買うとどんな苦境からも脱せられると信じて
いたのだ。
 デイブはアニーのため一肌脱ぐことにした。
 体裁を整え一芝居打ち娘の結婚を成就させるのだ。
 まずは、アニーの身なりを変えることから始めた。
 そして、ゴキブリのような女が蝶になったのだった。
 デイブの奮闘は実を結ぶのだろうか・・・?
 フォークが演じたのは、デイブの部下のギャング・
ジョイ・ボーイ役だった。
 ボスに注進とぼやきをくり返すつっこみ役で、重要
な役どころである。
 主役はアップル・アニーを大女優・ベティ・デイヴィス
デイブをグレン・フォードが演じている。
 そして、アニーの結婚相手としてでっち上げられるの
が、トーマス・ミッチエルである。
 トーマス・ミッチェル、そう2代目のコロンボ刑事を演
じたベテラン俳優である。
 フォークとミッチェル二人のコロンボ俳優は、この作
品で2度目の共演ということになる。
 ミッチェルは、この翌年62年に舞台化される”殺人
処方箋”という戯曲でコロンボ警部役を演じ大好評を
獲る。
 ミッチェルの演技と役作りがあまりにも素晴らしかっ
たので、コロンボ役のスタンダードとなったほどである。
 勿論、フォークはこの時点では将来自分がコロンボ
役を演じるとは知らない。
 さて”ポケット一杯の幸福”の監督は巨匠・フランク・
キャプラである。
 フォークは、撮影の過程でキャプラに大きな影響を
受けた。
 フォークはキャプラに向かって「自分はシリアスな演
技を売りにしてきた俳優だ。こんな喜劇みたいな芝居
はやりたくない」とぶちまけた。
 巨匠に向かって、こんなことを言うのであるからフォ
ークは向こう見ずなのか、ある意味純粋なのか。
 その言葉にキャプラはこう応えた。
「肩の力を抜いて、喜劇をシリアスに演じれば良いん
だよ」と諭したという。
 フォークの刑事コロンボでも見られるちょっとユーモラ
スでとぼけた役作りは、このキャプラの言葉が無かっ
たら生まれなかったかもしれない。
 後の述懐でフォークは「初めて唇にキスをしたいと思
ったほどに感謝している」と語っている。
 結果として、フォークはこの映画でアカデミー助演男
優賞にノミネートされた。
 この”ポケット一杯の幸福”は、俳優ピーター・フォー
クにとって大きな転機となった作品といえる。
イメージ 1
 ”予告編”
 
 
 
 
 アメリカ映画協会の式典でキャプラとの思い出
をスピーチするフォーク。
 かなりのスピーチ上手で大いに笑いをとりつつも
感動的に話を締めている。
 
 ~続く~