不二家憩希のブログ

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ピーター・フォーク氏ご逝去に寄せて その⑫

算局で勤めると同時に、”マーク・トゥエイン・マ
スカーズ”というコミュニティー劇場グループに
加わった。
 ”俳優”ピーター・フォークが、いよいよ始動で
ある。
 だが、この時点では、プロではなく未だアマチ
ュアである。
 そこでは、クリフォード・オデッツ作の”カントリ
ー・ガール”や”るつぼ”といった作品を演じた。
 フォークは、またコネチカットのウェストポートに
あるホワイト・バーン劇場でエヴァ・ル・ガリエン
ヌ指導のクラスで演技の勉強をし始めた。
 エヴァ・ル・ガリエンヌは、1899年生まれの
高名な女優、プロデューサー、演出家である。
 ブロードウェイや商業演劇で成功を収め、自身の
劇場も持っていた。
 彼女はこの時50歳代後半で既に多くの俳優
指導していた。
 このクラスはプロの俳優向けであったのだが、
フォークは嘘をついてこのクラスを受けていた。
 フォークは毎週水曜日にこのクラスのためハ
ートフォードからウェストポートへクルマで通って
いた。
 ハートフォードからウェストポートまでは結構な
距離がある。
 地図で見ると100㎞以上は離れている。
 予算局での勤務を終えてからクルマを飛ばす。
 これは相当な時間はかかる。
 そのためフォークは、いつも遅刻していた。
 フォークは後年当時を思い出して語っている。
「ある夜、私が到着した時、彼女(エヴァ・ル・ガ
リエンヌ)は私にこう尋ねたんだ。『若い人、どう
してあなたは、いつも遅刻するんですか?』」
「私は『ハートフォードからクルマで来ているもん
ですから』と答えた。」
「彼女は自分の鼻を見渡してこう言った。『ハート
フォードで何をしているんですか?あそこには劇
場だって無いでしょう。あなたは、どうやって生計
を立てているんですか?』
 フォークは自分がプロの俳優ではないことを白
状した。
 ガリエンヌは厳しい目でフォークを見てこう言った。
「あなたは、プロになるべきです」
 ピーター・フォークにプロ入りを決意させたのは、
エヴァ・ル・ガリエンヌのこの一言だった。
 そして、フォークはハートフォードへ戻ると、予算
局の職を辞したのだった。
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 左がコネチカット州ハートフォード、右が同州ウェストポート。
 相当離れている。
 
 
 ~続く~