私はリフォーム店を出てから次の用事先に向
かった。
そこで私は気がついた。
やっぱり、今は10%オフ期間中なので、10
%オフにしてもらえるのではなかろうか?
しかし、10%オフと言っても840円の10%
なので84円である。
これは、店に申し出ても良いのではないか?
だが84円のために引き返すのか。
それに、結構な大人の男が84円のために戻
って行くというのも、どうかな?とも思ってしまう。
84円くらいでガタガタ言うなんて、ちょっと男
らしくもないなぁ、とも思えてくる。
大人物は、これくらいの金額は気にしないと
思う。
しかし、私は大人物ではない。
迷うなぁ。
結局私は引き返すことにした。
その後に急ぎの用事もないし、言ってみるだけ
言ってみよう。
それに元はと言えば10%オフということで、こ
の日に頼みに来たのである。
当初の目的は完遂すべきなのである。
人間、自分の得になることであれば、どんな理
由でも思いつくものだ。
私はリフォーム店に戻ることにした。
店頭には誰もいない。
銀色の呼び鈴を押すと先程とは違う女性が出
て来た。
私は引換証を見せてこう言った。
すみませんが、細かいことを言うようですが、こ
れが10%引きになっていないようなんですが。
私がそう言うと、受付の女性は引換証を確認した。
「これは、どうも、すみません。すぐに訂正します」
あぁ、良かった。
ちょっと恥ずかしかった思いをした甲斐がある。
これは84円を超えるだけの恥ずかしさがあった
のだ。
女性は奥に引っ込み、ジージャンを持って来た。
そして、それに付けてある伝票を取り外し、訂正を
し、レジを打ち直した。
私は目出度く84円を戻してもらった。
「申し訳ありませんでした。お品物は、こちらですね」
えぇ?そうですが。
私がジージャンを確認すると、袖口のリフォームは
すでに終わっていた。
早いなぁ!
あれからまだ5~6分しか経っていないのに、もう
出来上がっているとは!
これは出直して来る手間が省けた。
リフォームされた袖口を見てみる。
おぉ、きっちり縫われている。
しかも、使われている糸が、程よく退色した黄色で
ある。
元々の他の糸と同じ位の退色具合なのである。
こんな糸も用意されているのか。
これならリフォーム箇所が目立つこともなく全体とマ
ッチしている。
最近は洋服のリフォームも競争が激しいので、細か
いところまで気を使っていることが察せられる。
これで私のジージャンも延命された。
また今年も私の大事な相棒となってくれるだろう。