不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

線の切れ目が縁の切れ目。その⑪

 私は、S電器店にシーリング変換プラグを
取り戻しに家を出た。
 ちょうどその日、同じ方向に用事があった
ので、そちらを先に済ませることにした。
 S電器店の件を先にしても良かったのかも
しれないが、ひょっとしてやり取りが長引く
かもしれないので後回しにしたのだ。
 S電器店は、市内を東西に走る幹線道路の
交差点にある。
 家族経営の店で、主人とその弟が中心にな
っている。
 店の前を通リ過ぎた。
 見ると主人が店の前にいた。
 今なら店にいるのか。
 主人が配達などで店を離れてしまうと、面
倒である。
 私は早めに用事を済ませて、S電器店に向
かった。
 私はS電器店のドアを開けた。
 中には主人の弟が座って何かしていた。
「昨日、工事をしてもらった○○ですが」私
が声をかけると弟は顔を上げた。
 私はこう続けた。
「その時にシーリング変換プラグを持って行
かれたので、返して下さい」
 初球直球ど真ん中である。
 こうした時にはストレートに言うに限る。
 盗まれた、とは言ってはいないが、十分に
ニュアンスが伝わる言い方をした。
 こちらはお客で被害者である、という立場
と意思を最初から明確にするにはこれしかな
い。
 それに持って回った言い方をすると、後で
ややこしくなると考えたからだ。
 主人の弟は、ちょっと驚いたような顔をし
た。
 それかすぐに奥にいるらしい主人を呼んだ。
 主人はすぐに出て来た。
 そして、弟に私の用件を聞いている。
 主人は薄ら笑いを浮かべて私の方にやって
来た。

 ~続く~