ムーンウォークで前進したマイケル・ジャクソン。

　マイケル・ジャクソン氏のアルバム「スリ
ラー」は発売当初は、それほど話題にもなら
なった。
　ビルボード誌と並ぶ米国のヒットチャート
誌のキャッシュボックス誌では、初登場１５
位である。
　初登場１５位なので十分成功と言えるのだ
が、かといって初登場１位でもない。
　決して並ではないが、異例と言うほどの成
功ではない。
　後に全世界で１億５百万枚も売れたアルバ
ムも、新譜の時はそんなものだったのだ。
　多くの人が、このアルバムの発売当初に将
来こんなに売れるようになるとは思っていな
かったと思う。
　私もその一人だった。
　そんな音楽シーンの大方の見方を一変させ
たのが、ムーンウォークである。
　ムーンウォークは８３年５月、モータウン
創立２５周年記念コンサートで「ビリージー
ン」の振り付けの一部分として初めて披露さ
れた。
　この時の全米の反響は大きかった。
　テレビを見ていた誰もがその動きに魅せら
れた。
　何だ？あれは！
　そのインパクトは強烈だった。
　それまで誰も見たことがなかった動きなの
だ。
　全米の驚きはすぐにヨーロッパや日本にも
波及した。
　多くの一般の人がムーンウォークを真似し
てみた。
　だが、うまくいかない。
　何とか似た感じにはなるが、スムースさが
出ない。
　マイケル・ジャクソンって凄いかも？と皆
が思い始めた。
　
　マイケル・ジャクソン氏が、キング・オブ・
ポップになる第一歩は、このムーンウォーク
からだったと言える。
　彼は後退りしながら、前進したのだ。

　マイケル氏は後に生涯で最も感動した瞬間
に、ムーンウォークを披露した時だったと語
っている。
　そのコンサートで共演したマービン・ゲイ
氏から抱きしめられ、その翌日にはダンスの
巨匠フレッド・アステア氏から「抜群だ」と
いう賛辞を電話でもらっている。

　ムーンウォークは音楽とは直接には関係は
無いが、マイケル氏の音楽に火をつけたのは
間違いない。
　ダンスがこれほどまで音楽に影響を与えた
のは初めてのことだと思う。

　それでは、そのムーンウォーク初登場のコ
ンサートの映像をご紹介する。
　まぁまぁ盛り上がってはいるが、それほど
でもないのは、このコンサートがマイケル氏
単独のコンサートではではないからである。
　一回目のムーンウォークには歓声が上がる
が、２回目にはそうでもない。
　おそらく観客は驚いていて声も出なかった
のだと思う。