不二家憩希のブログ

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「ガメラもつらいよ」その②

 現実には存在しないであろう主人公の設定
はそのままにし、周囲のキャラクターや状況
等の設定に強いリアリティを持たせ、作品と
してのバランスをとる、という手法は平成ガ
メラだけのものではない。
 日本で最も有名な映画である「男はつらい
よ」においても、この手法がとられている。
 車寅次郎のような人間は、実際には存在し
ていないと思う。
 性格的には似たような人はいたとしても、
あのような気ままなライフスタイルを続けて
いる人など実在しているとは考えにくい。
 トランク一つでぶらりともしくは急に旅に
出て、行った先で啖呵売の仕事が出来るわけ
が無い。
 一体、売っている商品はどう手配するのか?
在庫はどうしているのか?商品以外の販売資
材は、どこに保管しているのか?
 考え出したら疑問は尽きない。
 加えて、寅次郎がいくら人柄が良いとして
も、半年に一回の割合で大変な美人と知り合
いになる、という設定も現実にはまずありえ
ない。
 これらマドンナ達にも寅次郎同様に現実味
は無い。
 そういった現実感の無さを、周囲の登場人
物や社会環境や風景描写などの状況設定に強
いリアリティーを持たせることで作品の説得
力を持たせているのである。
 さくらの服装や家の様子やたこ社長の愚痴
など実に真実味がある。
 また、寅次郎の旅先での情景は、ドキュメ
ンタリーフィルムのようである。
男はつらいよ」は、寅次郎やマドンナの非
現実的で強烈なキャラクターを、周囲の人物
などの設定を細かく描き現実味を持たせるこ
とにより中和させて成立しているのである。
 つまり、寅次郎はガメラで、マドンナは敵
の怪獣なのである。

 私は、こうしたフィクションの創作技法を
ガメラ・寅次郎技法」と命名したい。