不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

明瞭な野口選手と鈍い高橋選手。

 日の当たる道を走ってきた人もいれば、そう
でない人もいる。
 高橋選手のように恵まれた環境で成長し結果
を手にした人もいれば、野口みずき選手のよう
にギリギリのところで踏ん張って成果を手にし
た人もいる。
 この二人は生い立ちからして異なるのだが、
オリンピックでの金メダルの獲得にいたるまで
の経過も大きく異なっている。
 高校時代まで無名だった野口選手は、名門の
ワコールに入社し徐々に頭角を現していったの
だが、師である藤田監督がワコールを退社する
と一緒にワコールを退社した。
 退社はしたものの移籍先のあてがあるわけで
はなかった。
 藤田コーチと選手達を採用してくれる会社は
日本中にどこにも無く、彼らはアパートを借り
て共同生活をし、ハローワークに通って失業保
険で暮らしていたのだった。
 絵に描いたような逆境である。
 何の保証も無く、未来に対する展望など描け
ようも無い状況である。
 彼らはその間もトレーニングは欠かさなかっ
たそうだ。
 彼らは自らを「チーム・ハローワーク」と称
していたそうである。
 何という楽天的な考え方なのだろう。
 本当のポジティブシンキングとは、こういう
人たちのことを言うのである。
 致命的な故障を隠していながら、「あきらめ
なければ夢はかなう」とか言っている高橋選手
は、現実離れした幼稚な夢想家でしかない。
 
 スポーツエリートとはかけ離れた暮らしをし
ていた藤田監督と選手たちだが、その後彼らを
採用してくれる会社が現れた。
 商品先物取引グローバリーである。
 この会社は、当時から法律すれすれの酷いビ
ジネスをしていて、かなり悪評がたっていた。
 その後、野口選手はアテネで金メダルを獲っ
た。
 グローバリーは、悪どい商売を続け当局から
摘発された。
 それで藤田監督と野口選手達は、再び移籍先
を探さなければならなくなった。
 だが、今回は野口選手が金メダリストという
こともあり引く手あまただったようだ。
 
 野口選手はグローバリーから新たな所属先で
あるシスメックスに移籍するに当たり、次のよ
うなコメントを発表した。
グローバリーには、困難な時に支援していた
だき本当に有難うございました」
 私は、このコメントを読んで感銘を覚えた。
 社長ら経営幹部が逮捕されるような会社に対
して感謝の言葉を送れるとは大したものではな
いか。
 普通だったら、「私の経歴に傷をつけやがっ
て」と憤慨したコメントを残したりするもので
ある。 
 あるいは無視やノーコメントで通すかもしれ
ないし、そういう態度をとっても誰も責めはし
なかっただろう。
 だが、野口選手はお縄になった会社に対して
感謝の言葉を述べたのだ。
 これはなかなか出来ることではない、と思う。
 彼女は苦難の時に受けた恩は忘れないでいた
のだ。
 現実的な明瞭な感性とは、こういうことを言
うのである。
 お世話になった師匠をあっさり切ってしまい、
目も合わせようともしない高橋選手とは大きな
違いである。

 多くの高橋選手のファンは、そんなことは考
えずに、ただ高橋選手と共に夢を見続けている
ことだろう。
 夢見る人間が実際には鈍感で幼稚で残酷であ
ることは、今回の高橋選手の言動で明らかにな
ったと思う。
 夢の旅人として夢想の中に生きるか、現実の
中に生きるかは各人の自由である。

 私達は、これらの鈍い感性の中で生きていか
なければならないのだ。
 大変なのはマラソンレースだけではないので
ある。