無料に弱い私

　一人住まいの我が家の泥棒よけ対策は、かなりシン
プルなものである。
　通帳、キャッシュカード等については、第三者には
分かり辛い場所に保管する。
　これらのものについては、何時もながらの残高が少
ないものであっても、悪用される恐れがあるので保管
には注意している。
　ただ、最近ではいろいろと各機関でカードを作って
くれるので、カードの枚数も多くなってしまう。
　だが実際に使用しているのは、地元の信用金庫のカ
ードだけで、あとは殆ど使うことは無い。
　それなら、使用頻度の低いカードは持たなければ良
いのでは？と思われるかもしれない。
　それが、最善の方法なのだろうがせっかく金融機関
がカードを作ってくれるとなると、つい作ってしまう
のだ。
　しかも、それらのカードの発行に当たっては初回無
料なのである。
　無料、となると途端に判断力が低下してしまうとい
うのが、私の特徴の一つである。
　無料なら作ってもらおうかな、と思ってしまうので
ある。こういった時の私の判断は実に早い。
　それで、使いもしないキャッシュカードを所有する
ということになる。

　真に賢明な人であれば、使う見込みが無ければ持た
ないという意思を保持し続けることが可能なのだろう
が、私はそうは行かないようだ。

　私は基本的に、タダ、無料に弱い。
　無料に釣られて心配事を増やすのは愚かなことなの
だが、目先のタダについ引っ張り込まれてしまうよう
である。

　人間の愚かさには限りが無い。
　人間は焦って掴み取りに走ろうとするよりも、何が
必要ではないか、ということに思考の焦点を合わせる
べきなのである。
　賢明さは、多く持つことよりも、より少なく持つこ
とに気づくことにあり、それを実践することにある。

　道はなかなか険しいものだ。