不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

ポジティブなおばあさんの作文を読んで

 購読している新聞に、読者投稿の作文が載っていた。
 作者は、93歳のおばあさんである。

 私は聴覚障害者で、人とのコミュニケーションがで
きません。一人暮らしの身でもあり、人と話して話題
を楽しむこともできません。
 人生、この年になると、果たして長生きが良いか悪
いか考えさせられます。しかし、健康だけが取りえな
のを神仏に感謝して過ごし、寿命を全うせねばならな
いと思います。
 それには、楽しさがなくては意義がありません。そ
の楽しさは、自らつくり出さないといけません。私は
朝夕と配達される新聞を待つ楽しさ、スーパーへ値打
ち品を求めに行く楽しさ、高齢者向けの行事に出席す
る日を待つ楽しさ-など、楽しみを自分で勝手に”製
造”しています。
 川柳とか文芸方面に手を伸ばし、入賞を目指して、
朝夕、頭をひねる楽しさもあります。入賞は八敗一勝
くらいの成績で劣等生です。またそこがいいとこで、
今日は明日はと入賞、入選を夢見て根気よく楽しく書
き続けるのです。だから、私にはストレスはありませ
ん。
 いつも希望と夢をもって、他人から見たらつまらな
いことも大げさに楽しんで、日々を送るようにしてい
ます。

 何と驚くべきポジティブな人なのだろう。
 聴覚障害があって人とのコミュニケーションが出来
ないという厳しい事実をまるで問題としていないので
ある。
 一人暮らしも、この方には何ら影響を及ぼしていな
いようである。
 それでは、辛苦を耐えて生きていこうとしているの
かと思えばそうではない。
 生きていく意義には楽しさがなくてはならない、と
断言してしまっている。
 この困難に対する切り返し方は見事である。
 その楽しみも実にささやかなものなのであるが、そ
の小さな楽しさが、このおばあさんを活気付けている。
 その上文芸方面にも旺盛な創作意欲を発揮している
のである。

 アンチエイジングとか言って、老いから何とか逃避
を図ろうとしている中年以降の一部の人達が腰抜けに
思えてくる。
 老いの問題は巨大にして強固なものなので、容易な
解決策は見出せないが、このおばあさんのような自分
の意思の持っていき方には啓発されるものがあると思
う。

 それにしても、やっぱり、日本の女性は強い、と改
めて認識させられた。
 何しろ長寿世界一なのだから強いはずである。