不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

Sさんの旦那さんが亡くなられた。そ⑰

 告別式から三日後の火曜日、私は最寄りの郵便局に行
った。
 用事を済ませていると、後方から声をかけられた。
 振り向くとSさんが座っていた。
 「今回は、どうもありがとうね」
 Sさんはいつも通りな感じだった。
 特に沈んでいるようでもなかった。
 私は簡単にお悔やみの言葉を述べた。
 亡くなったSさんは94歳で大往生と言える年齢である。
 晩年にかけて大きく患うこともなく寝込むこともなかった。
 だが、Sさんの弟たちが近年次々と先立たれ、それ以降急
に元気がなくなっていったそうだ。
 その他いろいろとお話をした。
 Sさんは、幾分クセのある人だが悪い人ではない。
 今回の当連載記事では批判的に記した点もあったが、普
通の善良な人である。
 家族が亡くなるといろいろと混乱が起きるのは仕方がない
ことであろう。
 気持ちの準備ができていても、実際にはうまくいかないこ
とも起こる。
 人の死とはそういうものである。
 長生きをすると、身内や友人・知人たちが先に没してしまい、
自分だけ取り残されたようになってしまう。
 長生きは素晴らしいことのようで、そうでもない一面もある。
 90歳代まで生きるのも良し悪しと言えるのではなかろうか。