くても構わない。
KさんとNさんはご夫婦で参加されている。
Nさんの奥さんは遺体横の簡易祭壇で祈った後、Sさ
んの枕元に移動した。
そして遺体の顔に自分の顔を近づいて言葉をかけて
いる。
通夜・告別式ではよくある光景であろう。
だが、私にはこれに違和感を覚える。
当人が存命中にしなかったようなことを、没後にやるか
ぁ~?
そんな近距離で顔を近づけて話すなんてことは、無か
ったであろう。
それを今している。
他の人も見ている中でである。
なんでやるのかなぁ~?
これは他人の視線があるからするのか?
或いはなんの考えもなくするのか?
こういう時にはこうする、という無意識の刷り込みが起
動してそうしているのだろうか。
そこに横たわっているのは、魂が抜けた物体である。
冷やしておかないと腐敗がすぐに始まる物体である。
それに向かって言葉をかける。
人として自然な行為の一つとして認められているのであ
ろう。
気持ちはわかる。
私でもわかる。
しかし、私には非日常時のパフォーマンスの一つに見え
てしまうのだ。
~続く~