「お隣はフジヤさんで班長さん・・・」
うちのことを言っているな。
それから間もなく我が家に人が来た。
「今度○○に引っ越してきたFです」
えぇ?
引っ越してきた?
そんな話は聞いていないぞ。
もっとも聞いていると言っても、地域社会における非
公式コミュニケーションからの情報である。
引っ越しのような話は予め漏れ伝わるのである。
Fさんが越してこられた家は、かつて当班のSUさんが
住んでおられたお宅である。
SUさんが突然何処かへ引っ越され空き家になってい
た。
SUさんは、引っ越した地で不慮の事故で亡くなってい
る。
その家にFさんが引っ越してきた。
う~ん、苗字が違うなぁ。
どうなっているのかな?
もっともSUさんも過去に突然苗字が変わっている。
離婚とかではなさそうだった。
詳しい事情はよくわからない。
ご近所さんの中には知っている人もおられるのだろう
が、あまり話したくない様子だ。
当班としては、人が増えることは歓迎である。
班や町内の業務を分担してもらえるからである。
Fさんは引越しの挨拶に順番に回っているようだった。
急な転入者に、少し戸惑った土曜の午後だった。