不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

町内会の初会合に行った。その⑳

 静かな会場に会計の説明が続く。
 その声を打ち消すかのように別の声が起こった。
 「3600円なんてねぇ」
 「婆様の一人暮らしに3600円はねぇ・・・」
 その声はKASさんのものだった。
 お歳は80代の中頃だろうか。
 息子さんがおられるはずだが、今は一人暮らしなのだ
ろうか?
 その口調は「聞こえることを想定した独り言」である。
 誰かに問いかけるわけでなく、だが皆が聞いているこ
とを明確に意識した声である。
 KASさんの声にこたえて別の女性が声を上げた。
 「こんな値上げしてもらっては困る」
 この人も80歳代くらいであろう。
 仮にMさんとする。
 この場に来ているということは、この方も一人所帯なの
だろうか?
 KASさんとMさんは、会費値上げに対する不満を語り
始めた。
 場内の皆が耳を澄ませて聞いている。
 言っている内容はもっともなことである。
 値上げがうれしい人はいないだろう。
 ただ、それに対し表だって不満を表明しないだけのこ
とである。
 この二人は、まさに今その不満表明をしているのだ。
 満場の出席者を前に不満を並べている。

 ~続く~