静かな会場に会計の説明が続く。
その声を打ち消すかのように別の声が起こった。
「3600円なんてねぇ」
「婆様の一人暮らしに3600円はねぇ・・・」
その声はKASさんのものだった。
お歳は80代の中頃だろうか。
息子さんがおられるはずだが、今は一人暮らしなのだ
ろうか?
その口調は「聞こえることを想定した独り言」である。
誰かに問いかけるわけでなく、だが皆が聞いているこ
とを明確に意識した声である。
KASさんの声にこたえて別の女性が声を上げた。
「こんな値上げしてもらっては困る」
この人も80歳代くらいであろう。
仮にMさんとする。
この場に来ているということは、この方も一人所帯なの
だろうか?
KASさんとMさんは、会費値上げに対する不満を語り
始めた。
場内の皆が耳を澄ませて聞いている。
言っている内容はもっともなことである。
値上げがうれしい人はいないだろう。
ただ、それに対し表だって不満を表明しないだけのこ
とである。
この二人は、まさに今その不満表明をしているのだ。
満場の出席者を前に不満を並べている。
~続く~