不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

野次馬に変化する人々。

 火事と言えば我が家の近くでこんなことがあった。
 今から17~8年ほど前のことである。
 午後4時過ぎ、私はその日在宅で自室のある2階にい
た。
 ふと外を見ると、黒い煙が家の前の道に沿って流れて
くる。
 地上から1メートルほどの高さで、真っ黒な煙がゆっくり
我が家の前にまで迫ってくる。
 何だ?
 私は、これもたまたま家にいた両親に教えた。
 それから数秒後、サイレン音が鳴り始めた。
 サイレン音が増えていく。
 消防車が集まって来ているようだ。
 火元が近いらしいことは、すぐにわかった。
 近くのSさん宅らしい。
 我が家からは50メートルほどのところのお宅である。
 両親は家を出た。
 野次馬である。
 あぁ、嘆かわしい。
 私は、野次馬にはならなかった。
 私の美学に反するからである。
 我が家の前の道を通って野次馬はSさん宅を目指す。
 野次馬は、遠くからも集まっていく。
 そして、時間が過ぎ、鎮火となる。
 帰ってきた両親に対し私は、冷たい視線を向ける。
 「いい大人が野次馬とは。何とも思わない?」
 私は、見下すように言った。
 両親は、言葉を返せない。
 どうやら、ご近所のすべてのお宅の方々が野次馬にな
って見に行ったらしい。
 在宅中の全部の人である。
 例外は、唯一私だけだった。
 良識派で知られるKさんやTさんも総出で駆け付けたそ
うだ。
 だから自分たちの行為は、それほど悪くはないとでも言
いたげだった。
 あぁ、KさんやTさんまでも野次馬に変化してしまうのか。
 これは意外だった。
 火事は人の冷静さを奪うとはよく言われることである。
 それは真実のようだ。
 理性が飛んでしまうのだろうか?
 これが、現在の地球人の意識レベルといったところだろ
うか。
 人はまだまだ進化の余地があるようだ。