リを行っていた。
5月のある日、私は急に「カミソリで剃ってみよう」とい
う気になった。
我が家には使い捨てのT字カミソリが大量にあった。
伯父の形見分けの品のひとつとして父が貰ってきた
ものだった。
伯父は、化粧品やそれに類する小間物の卸商をして
いた。
ごく小さな商いだった。
父がもらってきて以降、誰もそのカミソリを使う者はな
かった。
シェーバーを使うので、必要なかったのだ。
ある時、私が掃除をしていたところ、そのカミソリが入
った箱を見つけた。
青くメーカー名とカミソリのイラストが印字された大箱
である。
おそらくこれが最小出荷単位だったのだろう。
中にはカミソリが五本一括りになったものが、40セット
入っていた。
計200本である。
これは、たくさんである。
とても一人では使い切れない。
私は知人やご近所の方に「カミソリはいりませんか?」
とこえをかけることにした。
カミソリを人に差し上げる、これは何やら失礼なこと
になるのだろうか?
私が知らないだけで、そういうことがあるかもしれない。
仮に後で揉めると厄介なので、声をかけるのは簡単
にフォーローが効く間柄の方に限定した。
範囲を狭めたせいか、もらってくれる人は、現れなか
った。
となると、自分で使うしかあるまい。
私のカミソリでのヒゲソリは、こうして始まることとなった。
~続く~