私は数分間、パソコンの前で瞑目していた。
左のまぶたにチクッと刺された感覚がした。
これは、蚊か?
そう言えばさっき飛んでいた奴か。
その時は行方を目で追ったのだが、見失ってしま
っていたのだ。
だが、まさかまぶたを刺すか?
そんなことを考えていると、今度は右のこめかみ
に同様の刺激があった。
私は平手で叩く。
素早くはあるが、手加減している。
自分の顔面を全力で猛打する度胸はないのだ。
捕獲失敗だ。
少しずつかゆくなってくる。
おのれ、蚊め。
許さん。
血を吸うだけならまだしも、かゆくしていく嫌がらせ
には容赦できぬ。
死をもって償ってもらおう。
私は皮膚感覚に注意を凝らす。
すると右の上腕部の裏側に刺された感覚がする。
私は左手で叩く。
やった。
捕獲成功だ。
捕獲と同時に圧殺である。
猶予無しの即時殺害である。
哀れな奴め。
私は蚊とネズミには冷酷なのだ。
その後私のまぶたは、少し腫れたが、すぐに元通り
になった。
蚊なんぞには負けてはおれぬ。
悪魔の使いめ、いつでも来い。
皆殺しを覚悟するがよい。