私は待合室から診察室の前の椅子に座った。
ここで呼ばれるまで、少しの間待つらしい。
ちょっと周囲を見てみる。
小さなお子さんを連れたお母さんが、2組いる。
顔見知りなのか、何か話している。
ここは子供からお年寄りまで患者の層が広いよ
うだ。
名前を呼ばれて診察室に入る。
へぇ、この場所では名前を呼ぶのか。
番号だけでやりとりすると、患者を間違える可能
性もあるからかもしれない。
看護士に指示されて、医師の前の丸椅子に座る。
回転式で背もたれがない椅子である。
このような椅子は日常はまず見かけない病院特
有の装備品である。
医師が机の上の検査結果を見ている。
「異常はありませんね」
医師はそう言ってこちらを向いた。
「『普段歩いている』というのは良いことですね」
私の場合、仕方なく歩いているだけである。
「ちょっと痩せすぎですかね」
何かと努力はしているんですけれど。
医師は、私に検査結果を手渡した。
私はそれを持って診察室を出た。
異常無し、か。
まぁ、そうだろうな、とは思っていた。
前回の検査から半年も経っていないのである。
私は、自転車に乗って町へ走り出した。