私は一軒目の用事を済ませ、自転車に乗り走り出した。
あれ?
右足がプラプラするな。
見ると靴底の踵の部分がはがれている。
この靴はスエードで底はラバーである。
厚いラバーが靴にぶら下がっているようになっている。
おぉ、これは。
どのくらいもつかな?
とりあえず、次の用事先に行くしかない。
私はそのまま走っていった。
2~3分後、右足が急に軽くなった。
どうしたのかな?
右足を見てみる。
靴底の踵部分が完全に落ちてしまっているではないか。
ワハハ、これは面白い。
私は落ちた踵を探しにUターンした。
今落ちたばかりだから、それほど遠くではなかろう。
踵はすぐに見つかった。
家に戻ってから、元通りになるか合わせてみた。
接着剤で何とかならないかと思ったからだ。
だが、どうもうまく付きそうも無い。
有名メーカーの品だが、やはり寿命はあるのだね。
あるいは、この夏の暑さで接着剤が溶けてしまっていた
のだろうか。
この靴もこれでお役御免か。
元々は父が自分用に買ってきたものだが、家では履い
てみると、どうもサイズが合わない。
そのため死蔵していた。
父の死後、母が「それではお前はどうか?」ということで
私に履かせてみた。
ピッタリだった。
父の形見のひとつということである。
以降、晴れの日の多くは、あなたと出かけたものです。
長い間ご苦労さまでした。
あなたのおかげでいろいろな所へ出かけることが出来ま
した。