不二家憩希のブログ

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デモーニッシュ、悪魔的?

 ネットラジオを聴いていた。
 流れてきたのはヒナステラの「弦のための協奏曲」
だった。
 ヒナステラは20世紀のクラシックの作曲家である。
 独特の作風は現代音楽とも伝統音楽とも一線を画
している。
 どんな音楽、誰に近いかということを説明するのが
難しい。
 それほど際立った個性の持ち主である。
 ちなみにヒナステラの弟子にはアストル・ピアソラ
いる。
 さて、このヒナステラの曲をロックのキーボード奏者
キース・エマーソンが自分のロック・バンド用に編曲し
録音し発表しようとしていた。
 曲はヒナステラのピアノ協奏曲第一番である。
 ヒナステラは自分の作品の編曲を滅多に許可しな
い作曲家だった。
 そこで、エマーソンは編曲の許可を得ようとスイスの
ジュネーブに住むヒナステラを訪れた。
 世界中で人気爆発中のロック・ミュージシャンのエマ
ーソンではある。
 怖いもの無しかといえばそうでもない。
 何しろこれから会いに行くのは20世紀最高のクラシ
ック作曲家の一人である。
 エマーソンは神妙にヒナステラにその録音を聞かせた。
 クラシック曲をロック用に編曲したものである。
 それを聴いたヒナステラは「デモーニッシュ!」と言った。
 デモーニッシュ?
 悪魔的?
 エマーソンはさっぱり意味がわからなかった。
 悪魔っぽいてことは、悪いということか?
 どういうことなのだ?
 だが肝心の編曲は許可された。
 エマーソンは状況が掴めなかった。
 果たしてヒナステラはどう思ったのか。
 後でエマーソンは他の人に尋ねてみた。
 すると、「デモーニッシュ」とはクラシック音楽において最
高のほめ言葉だという。
 悪魔的というニュアンスではなく、神秘的な力強さを感
じさせる、というような意味らしい。
 日本語であえて置き換えれば「鬼神のごとく」といったと
ころだろうか。
 ヒナステラは異ジャンルであるロックであろうと良いもの
は良い、とする柔軟なセンスの持ち主だったようだ。
 
 私が今回聴いた「弦のための協奏曲」もまさしくデモー
ニッシュな一曲だった。
 ヒナステラ、さすがピアソラの師匠だけのことはある。
 こちらはオリジナルのピアノ協奏曲第一番である。
 実に熱狂的な音楽である。
 こちらがキース・エマーソンが編曲した作品。
 これを聴いて作曲者のヒナステラは絶賛したのだった。