夜、布団の中でラジオのスイッチを入れた。
曲が流れている。
ロックだ。
ロックはロックでもちょっと変わったサウンドだな。
ブラックミュージックのテイストがある。
ハードロックにブラックミュージックを加えている
ようだ。
ギターはオリジナリティあふれるフレーズを弾い
ている。
聞いたことがないようなギターである。
これは相当な使い手だ。
ヴォーカルもなかなか良いな。
こんなバンドが出てきたのか。
曲終わりに曲名とバンド名が告げられた。
「1975年の曲、ディープ・パープルで”ゲッティン・
○△□ーで”した」
ディープ・パープル?
これがディープ・パープルなのか?
1975年というとリッチー・ブラックモアがバンドを
抜けた頃か?
私はディープ・パープルについては、詳しくない。
雑誌や本で彼らの活動について読んでいろいろ
なエピソードは知っている。
だが、実際に音源に接することは少なく細かくは
聞いていない。
後日、ネットで調べてみた。
曲名は”ゲッティン・タイター”だった。
1975年発表のアルバム”カム・テイスト・ザ・バン
ド”の収録曲である。
”カム・テイスト・ザ・バンド”は、発表当初から「デ
ィープ・パープルらしさが無い」と評され黙殺されて
きた作品である。
「がっかりな一枚」と囁かれた。
異端の作品と言う声もあった。
なるほど、そういった批評は出ても不思議ではない。
これは普通のハード・ロックではないからだ。
ブラック・ミュージックに通じたギタリスト・トミー・ボー
リンとベーシスト・グレン・ヒューズが加入することによ
り、ハード・ロック+ブラック・ミュージックというそれま
でに存在しなかった音楽が展開されていく。
これは、なかなか良いなぁ。
ハード・ロックとブラック・ミュージックの融合は、音
楽的に難しいのか、それとも需要がないのか、絶対
数が少ない。
この”カム・テイスト・ザ・バンド”は、発表当時の低評
価を覆し、現在では希有な名盤として認知されつつある。
また新しい優れた音楽を見つけることが出来た。
これは音楽ファンにとっては至上の喜びである。