桜並木の横を自転車で通った。
葉が紅葉して、アスファルトに落ちている。
桜の葉の紅葉もなかなか良い。
桜の紅葉は、葉のデザインや発色、密集度な
どの点で観光資源にはなり得ないだろう。
葉は普通のありきたりの形で面白みに欠ける。
また、大きくて無骨である。
色も真っ赤にはならなず、くすんでいる。
美しいという色合いではない。
葉と葉の間隔が大きく木自体も密集して植えら
れていないので、紅葉以外の空いた空間が大き
く「一面の紅葉」ということにはならない。
そのため桜は紅葉界では脇役である。
だが、それでも独特の味わいがある。
紅葉し、そして落葉せざるを得ないところに、こ
の世の仕組みを教えられる。
人もまた桜の葉なのである。
桜の木には、まだ沢山の紅葉がある。
そして、これらの葉が全部落ちると、いよいよ冬
本番である。
桜は黙って季節の到来を告げている。