不二家憩希のブログ

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マッサージチェアを運び出す。その②

 最近は良く知らないが、70年代には温泉旅
館には電動マッサージチェアが置いてあった。
 それに一回100円を投入して利用する
 それらのマッサージチェアは現在、家庭用に
普及しているものよりもずっとシンプルな作りで
あった。
 それでも、そうした装置が珍しかったこともあ
り、旅館のお客にもほどほどの人気があった。
 簡単な動作しか出来ない機器ではあったが、
それでも他では味わえない感触があった。
 何しろ機械が、揉んでくれるのである。
 しかも人間に頼む時のような気遣いがいらな
い。
 温泉に浸かった後に、気楽にマッサージされ
る、これはちょっとした楽しみである。
 おそらく父は、旅行に行った時にこうしたマッ
サージチェアを利用していたものと思われる。
 それで、これが家にもあったら良いなぁ、と思
ったに違いない。
 それからほどなくして、ナショナルが家庭用の
マッサージチェアの開発、販売を始めたのだっ
た。
 温泉旅館に行かなくとも家に居ながらにして、
あのマッサージを体験できるのである。
 しかも、自分ひとりで思う存分出来る。
 旅館だと、次に待っている人を気遣えば連続
使用は躊躇われる。
 それに使用料金の100円は当時としては結
構な金額である。
 今の貨幣価値で言うと500円に近いのでは
なかろうか。
 約5分500円は、旅行先の気晴らしとはいえ、
ちょっと高い。
 それが自家用ならタダである。
 父は、その家庭用マッサージチェアをすぐに
購入したのだった。
 
 ~続く~