不二家憩希のブログ

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冷蔵庫を止めた。その⑦

 忘れられない物とは、冷凍されたシジミ
ある。
 それは父が生前最寄の1級河川に行って拾
ってきたものである。
 冬などの寒い時を除き、父は暇な時にシジ
ミ拾いをしていたのだ。
 老化防止の運動と食料品の獲得という実益
を兼ねていたためか、父は熱心にシジミ拾い
をしていたようだ。
 それを冷凍していておいたものが残ってい
たのである。
 これはある種の父の遺品である。
 私はそのシジミを簡単に食べるのは、ちょ
っと申し訳ないような勿体無いような気にな
っていた。
 そのため父が亡くなってから、どうしても
食べるタイミングを逸してしまっていたのだ。
 一応カチカチに冷凍しておいてあるので、
質の劣化は防げてはいたと思われる。
 私は冷蔵庫が壊れたこの機会に、思い切っ
て食べることにした。
 このまましまっておいても、食べることに
はなりそうもないからだ。
 
 と言っても、シジミをどう料理して良いの
か、私にはよく分からない。
 それで味噌汁の実にすることにした。
 もっと洒落た活用法とかがあるのだろうが、
私には味噌汁で十分である。

 それから数日間、私はシジミの味噌汁を食
べた。
 
 私は久しぶりに父のことを思い出した。
 ~続く~