不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

「男はつらいよ」第一作目を観た。

 「男はつらいよ」をテレビで観た。
 この作品は、第一作目で、サブタイトルも
無い。
 元々フジテレビの人気ドラマだったものを
松竹が映画化したのだが、当時はこれほどヒ
ットし長寿シリーズになるとは製作者側は少
しも思っていなかったのだそうだ。
 今と違い当時はテレビドラマの映画化はあ
まりポピュラーではなく、単なる二番煎じと
言う捉え方をされていた。
 テレビでやった作品を、もう一度映画にし
てもお客は来てはくれないだろう、と多くの
関係者が思ったそうだ。
 主演は、テレビ版と同じ渥美清、さくらは
テレビ版の長山藍子を当時、下町シリーズで
人気だった倍賞千恵子になった。
 監督は、喜劇映画で評価されていた若手の
山田洋次があたった。
 関係者の誰もが、「ヒットしないだろう」
と思って作っており、シリーズ化など考えて
もいなかったそうだ。
 制作費も低く抑えられており、いわゆるス
ターは倍賞千恵子だけである。
 マドンナ役の女優もなり手が無くて困った
そうだ。
 下町のだんご屋の息子でテキヤの男が失恋
する話なんてカッコ悪いから嫌、と声をかけ
映画女優、テレビ女優全員に断られた。
 仕方なく、新派の舞台女優として活躍中の
光本幸子に出てもらった。
 人気女優がマドンナ役で出るようになるの
は、ずっと後になってからである。
 人気作品であれば、ホイホイ出たがるのだ
から女優なんて現金なのもだ。
 後年、山田監督は、「こんなにヒットする
んだったら、さくらを早々と結婚させるんじ
ゃなかった」と語っている。
 さくらの結婚に寅次郎が関わって大騒ぎ、
と言う話が5~6話は作れたであろう。
 一作で終わるつもりだったので、作品の最
後で子供まで生まれてしまっている。
 この作品は、寅次郎がまだワイルドでちょ
っと怖い気もするが、そのあたりが作品に躍
動感を与えていて良い。
 後年の善人の寅さんではない、リアルな渡
世人のムードが溢れている。
 このシリーズの特色に一つの暖かい下町人
情だとか田舎の牧歌的風景とかは、この作品
ではまだ無い。
 そんな描写をする余裕がなかったのだろう。

 やっつけ仕事とまでは言わないもののかな
りの駆け足で作ったこの作品が、世界的な長
寿シリーズの基になった。
 製作者の意図をはるかに超えた支持がこの
作品に集まったと言うことである。
 やはりお客様は神様である。