不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

「あなたの笑顔を覚えていたい」を観て。

 少し前のことだがNHKで「あなたの笑顔を覚
えていたい」というドキュメンタリー番組を
放送していた。
 この番組は、子供の頃に遭った交通事故に
より高次脳機能障害を負ってしまった女性の
子育てを記録したものである。
 高次脳機能障害には様々な症状がある。
 この女性の症状は記憶障害である。
 日常生活における記憶が残らず、酷い時は
30分前のことも忘れてしまうそうだ。
 女性は、夫と赤ちゃんと女性の母と同居し
ていて、主婦として母と家事を分担している。
 だが、その家事を順調にこなしていくのは
大変なようだ。
 女性の母に、ご飯を炊いておいて、と頼ま
れても忘れてしまう。炊飯器のスイッチを入
れることや、それ以前に米を研ぐことも忘れ
てしまっている。
 その他にも、いろいろと忘れてしまう。
 それで一日に何度も家事が滞ってしまう。
 女性は母に「普通にやって頂戴」と注意さ
れるのだが、その「普通」が出来ないのだ。
 そう注意されて女性はぼろぼろ泣いてしま
う。
 「普通」が出来ないことは、本人が一番承
知していることである。それを厳しく指摘さ
れるのだから、泣けても当然である。
 身内の人間は、その日頃の言動に遠慮が無
いので、言い過ぎになっていることに気が付
かないものだ。
 女性は、次にやらなければならないことを、
ノートの書いておいて、常にそれを読んで家
事をする、という方法を取っていた。自分が
忘れてしまう前に記録しておくのである。こ
れで大分能率は上がっているようだが、時に
は、そのノートをチェックすることも忘れて
しまう。
 そんな彼女が出産し育児をするのであるか
ら、苦労は人一倍多い。
 そんな彼女が夫と赤ちゃんとで名古屋に一
泊旅行に行った。
 名古屋駅前の高層ビルの展望台に上がった
り、動物園に行ったりした。
 ベビーカーを押す彼女も嬉しそうである。
 しかし、そんな楽しい思い出も彼女の記憶
にはとどまらない。
 後日、その時の写真を見ても思い出せない
のだ。
 そして、皮肉なことに彼女は、辛い出来事
は記憶していられるそうだ。
 楽しい記憶は次々と忘れてしまい、辛い記
憶のみが蓄積されていく。

 番組タイトルは、まだ1歳の可愛い盛りの
我が子との楽しい思い出を覚えていたい、と
いう女性の切なる願望を表している。