不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

スーパーのベンチで買ったばかりのお弁当を食べるおじいさん。

 私は、いつものスーパーへ買い物に行った。
 
 このスーパーは入り口付近に広めのスペー
スがあり、壁沿いに飲料水の自販機が3台と
ガチャポンが10台ほど置かれている。
 自販機の前には、背もたれに白地で食品メ
ーカー名が書かれた青いベンチが3台置かれ
ている。
 そのベンチに70代くらいの背の高そうな
おじいさんが座っている。
 おじいさんは、少し斜めに座り、ベンチに
レジカゴを逆さに置き、その上に、このスー
パーで買ったばかりのお弁当と小さいペット
ボトル入りのお茶を載せている。
 簡易食卓の出来上がりである。
 おじいさんは、ゆっくりとお弁当の包装を
解いている。
 時計を見ると、12時3分である。
 このおじいさんは、今からここで昼食をと
ころのようだ。
 時刻としては昼ごはんにぴったりのなので
あるが、どうしてここで食べようとしている
のだろうか?
 家で食べた方が、のんびり出来そうに思え
るのだが、おじいさんは、どうしてもここで
食べたいようだった。
 家では食べられない事情でもあるのだろう
か。
 家人と面倒を起こして、家を出て来て、今
日のお昼はここで済ませようとしているのだ
ろうか。
 ひょっとしたら、このおじいさんは一人暮
らしで、ゴミの始末が面倒なのでここで食べ
て、ゴミはそのままここへ捨てていこうとし
ているのだろうか。
 しかし、お弁当のゴミといっても高が知れ
ている。
 では、何故、このおじいさんは、ここで昼
食をとろうとしているのであろうか。
 家で独りで食べていても寂しいので、ここ
に来て周囲の人の顔を見ながら食べてみたい、
と思っているのかもしれない。

 私は、買い物の会計を済ませてレジを抜け
た。
 おじいさんは、背を少し丸めてお昼ごはん
の最中である。
 私が見る限り、その後姿には孤独な影は感
じられなかった。

 私は、スーパーを出て、冬の冷たい空気の
中、誰も待つ人のいない家へと向かった。