自宅から300メートル程離れている物置小屋に行った。
今日の出動は、自転車2号だ。さすがの私でも廃車寸前だろう、
というようなコンディションの自転車ではあるが、動く以上は捨
てられない。
300メートル位、歩けよ、と言われそうだが、つい乗ってし
まう。
家の前の道を行くと、小屋の向こうに紅白の横断幕が見える。
おっ、こんなところに新しいお店が、オープンしたのか?と思
ってよく見たら、そこは市議選の選挙事務所であった。
しかも、K党である。知らないわけだ。
強力な組織票を持つK党だったら、選挙運動などしなくても、事
前に想定した議席位は楽に獲得できそうなものなのに。
ガチガチの自民地盤の当地では、K党は完全に異端者である。
それでも、常に一定の議席をキープしているK党に対しては、地
元民は、一種の恐れのようなものを持っているようだ。
別世界の生命体を見るかのようにしているのだ。
人は、自分が理解不可能な人や物事に対しては、拒否か拒絶をす
るか、その人や団体は狂気である、と決め付けてしまう。
人にとって、理解不能は呪いなのだ。
私は、その清潔そうな選挙事務所を眺めた。
少しずつお店などが出来てきてはいるが、このあたりに選挙事務
所が開設されるというのは、異例のことである。
ライトブルーを基調としたそこは、朝早くということもあるのか、
静かに見える。
周辺住民に無視されていることを知っているので、熱くもなれな
いのか。
あるいは、熱気に満ちてはいるのだが、私には感じられないだけ
なのか。
選挙上手なK党は、そんな環境も上手にコントロールしていくの
だろう。
根を張ろうとする意思は、偏見をも打ち破っていく。
私は、物置小屋で用事を済ませて、次の用事先に向かった。