方言混じりで話された言葉もいくつもあるが、匿名性を
保持するために共通語に直している。
だが、記されている内容は全て事実である。
ベテラングループのテーブルで動きがあった。
来年度の町内会長さんが紹介され席を移動した。
横と向かいの席には会長経験者のINさんとSHさんが
座っている。
会長経験者たちから激励やアドバイスを、ということで
あろう。
アルコールが入っており緩んだ感じの顔合わせである。
少し話が進んだところでSHさんがこう話し始めた。
「僕なんか会長をやった年には『新入りのくせに会長を
やって』とか『養子のくせに会長をやって』って言われたこ
とがある」
えぇ~、何だぁそりゃ~。
INさんは、この話を以前から知っていたそうで、相槌を打
っている。
SHさんは、結婚し養子で当町内に来られた方である。
新入りと言っても結婚以来、もう何十年も当地にお住まい
である。
嫌味を言ったのは、当町内のムラ社会の古顔の一人であ
る。
その古顔の家は江戸時代初期から続く家である。
当地は意外と歴史が古く、そういう家柄を鼻にかけている
家も珍しくない。
古い家柄でも、そうしたことを一切表に出さない気取らない
良い方も多い。
だが、少数であっても己の家の古さを誇り、新しい家を馬
鹿にする人もいる。
SHさんは、自虐ネタ風に話しているが、その内容は笑い
話の域を超えてしまっている。
新入りだから、とか言って見下し、養子のくせにとまで言う。
これは、大人のいじめである。
それにしても「養子のくせに」とは、中高生レベルの言い草
である。
この話に黙っていられない人が声を上げた。
~続く~