不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

護国神社の寄付金集めに回る。その⑨

 次はSIさん宅である。
 ここは、班内の最高齢のご夫婦である。
 年はいっていても、今ひとつ常識と、マナーに欠ける
点があるのが残念である。
 奥さんは、通夜、告別式においておしゃべりをしっぱ
なしなのだ。
 年長なので誰も注意ができず、事実上の放置である。
 自らの死が近いであろうことは、その年令を見れば
わかりそうなものなのに、死は遠い別世界の出来事の
ように考えている。
 気の毒な人である。
 ドアフォンを押すと、玄関から声が聞こえる。
 奥さんがカレンダーに何か書き込みをしている。
 私は寄付金の件の説明をし封筒を手渡す。
 奥さんは、別室に消える。
 ここのお宅は、護国神社の寄付に関しては毎年他の
お宅よりも多めの寄付をされる。
 少しして奥さんは戻ってきた。
 封筒を受け取る。
 奥さんはこう言った。
 実際には当地の方言混じりなのだが、ここでは標準
語に訳して記す。
 「最低100円だからね。『いくら?』って聞かれたら
『100円です』って答えればいいのよ」
 えぇ~、なんだそりゃ? 
 そんなこと、あなたが決めることではないだろう。
 こういう発言を平気でする人なのだ。
 「うちは、今年は300円入れた」
 誇らしげである。
 そして、こう続けた。
 「どうして、多く入れるかというと長男を祀ってもらっ
ているから」
 え?そうなのか?
 初耳だ。
 私が知らなかっただけなのだろう。
 年齢からすると大戦ではなく殉職自衛官か?
 奥さんは私から何か特別なリアクションを期待して
いるようだ。
 だが、私は「そうですか」と平坦に告げただけであ
った。
 
 ~続く~