顔にふわっとした感触がする。
左目の耳寄りの部分がわずかに痒くなる。
蚊だ。
蚊が刺している。
しかも顔だ。
ここは、敢えて待って叩く。
そして叩く。
手のひらを見る。
逃げられた。
痒くなっただけである。
素早い奴だな。
あるいは私の叩き方が鈍かったのか。
数秒後、蚊は額に止まろうとしている。
あくまで顔狙いか。
額に触った程度で、すぐに離れた。
額はあきらめたようだ。
次は、どこだ。
5秒後、右の耳の後ろに止まったようだ。
焦ってはいけない。
刺させて、そこを一撃である。
痒くなった。
私は一呼吸待ってから叩いた。
やった。
圧殺成功である。
顔ばかり狙うふざけた蚊だった。
(こいつはトロそうだから、顔を襲っても反応しないだろ
う)と思っていたに違いない。
結局額も刺されていた。
私は顔の左右と額を刺され、痒い時を過ごした。
忌まわしきは蚊である。