Aさんは、医者だった。
現在地に、医院を立て引っ越してきた。
当町内連合会内の出身ではないが、近い町の生まれら
しい。
医院は一階と2階が医院と医療関連サービスの施設、3階
から上がAさんの家族の居住階だった。
駐車場も広くとられている。
当町内連合会では例のない大きさの建物である。
医院と言う言葉でイメージする町医者風のサイズではな
かった。
開業当初はAさんともう一人の医師がおり、医療サービス
の方にも何人もの人が務めていた。
看護師の他にも「事務長」という役職の男性もいた。
医院から外部への折衝は、この事務長が取り仕切ってい
た。
やり手風の男性で、Aさんの右腕とみられていた。
医院は、開業当初は上々のスタートだった。
「この町内にこんな立派な医院ができるとは」
地域住民の皆に好意的に受け止められていた。
「この先何十年もこのあたりの医療は安心だ」
そんな声もあった。
建物の豪華さは、そこに働く人、住む人のイメージを引き
上げる効果があるらしい。
まだAさんの医療実績が明らかになっていないのに、高評
価が与えられた。
多くの人はそんなものである。
見かけで判断し、それ以上を見ようとはしない。
そんな中で私だけは違う目で見ていた。
~続く~