不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

サイドカーを見た。

 いつものスーパーからの帰り道、私は神社の角を
右に曲がった。
 大通りから少し入った道である。
 真っ直ぐ走ると、左側の民家の門前に見慣れない
ものが止まっている。
 (あれは、ひょっとして?)
 大きなバイクの横に助手席が付いている。
 サイドカーである。
 全体が黒のボディで、所々に緑色の模様が入って
いる。
 珍しいな。
 このあたりでサイドカーを見ることは殆どない。
 走っているのも止まっているのも見かけない。
 フェラーリですら時折見かけるのにサイドカーは、
見ない。
 当地に近い都市部でも同様である。
 サイドカーは幻の存在である。
 70代くらいの男性が、そのサイドカーを磨いている。
 だが、どうして玄関前で磨いているのだろう?
 ガレージや駐車場は、この方向には見当たらない。
 ははぁ、通る人に見てもらいたいのだな。
 それでわざわざサイドカーを人通りのある玄関前に
持ってきているのか。
 そう言えば磨いている人の表情は、ちょっと自慢げ
である。
 実はこのお宅については、少しだけ知っている。
 クセのあるちょっと付き合いにくいであろう家なのだ。
 私は、サイドカーの横をゆっくり通り過ぎた。
 話しかけてみようかと思ったが、ためらっているうち
に自転車は進んでしまった。
 まさかわが家から、それほど遠くないところでサイド
カーを見るとは思ってもいなかった。
 次に、このサイドカーに会ったら話かけようか。
 迷うところである。